会社と何らかのトラブルでもめてしまい、あるいは、会社との関係が悪化した、会社の経営状態が悪化している等の事情から、賃金を払ってもらえていない労働者の方からご相談を受けることがあります。事案によって、様々な事情があるとは思いますが、賃金の未払いは、労働基準法という法律に反するものであり、違法行為です(以下、「労基法」と省略します。賃金の規定は労基法24条に規定されています。)。
以下では、未払いの賃金を請求する方法を紹介させていただきます。
- 会社は様々な理由で賃金の支払いを拒否してきますが、就業規則等に規定がある場合でも、賃金をカットするためには様々な要件が必要であり、無条件に払わなくてもいいということにはなりません。
〈未払賃金を請求する方法〉
未払賃金を請求する方法としては、以下の方法が考えられます。それぞれについて簡単に説明をしたいと思います。
- 会社と直接交渉をする
- 内容証明を送る
- 裁判所を利用した手続を検討する
例:訴訟(裁判)、調停、支払督促、労働審判 - (③まで行い、請求が認められたにもかかわらず支払われない場合)差押えをする
① 会社と直接交渉をする
まずは会社と直接交渉をすることが考えられます。支給を受けられない理由を確認する必要がありますし、少し待てば支給が得られる場合もありますので、まずは話合いを試みます。
なお、直接話すのが難しい場合や、話したけれども改善されなかった場合には、弁護士に依頼することが考えられます。賃金は本来支払われるべき時期(給料日)から2年で時効になるので、弁護士への相談などの行動を早めにすることが重要です。
*時効期間は令和2年1月時点の法律による。これを3年ないし5年に延ばす改正の議論が行われていますので、必ず最新の情報をご確認ください。
② 内容証明を送る
話合いでは解決しなかったという場合に、内容証明を送り、賃金の支払いを請求するという方法があります。郵便局を通じて記録を残すことができますので、書面を送ったという証拠も残すことができますし、特定の書式で送付するので、威嚇効果が期待できる場合もあります。
これについても、弁護士にご依頼いただければ、弁護士からお送りします。(なお、当事務所では、賃金請求に関して内容証明送付をご依頼の場合はその後の交渉を含めてご依頼いただくことを原則としております)
③ 裁判所を利用した手続を検討する
内容証明を送っても無視をされた、あるいは支払いを拒否されたという場合には、裁判所を利用した手続を検討することになります。通常の裁判の他に、労働審判という方法などもあります。 法律上は弁護士をつけないで裁判等をすることもできますが、裁判や労働審判を行なうには専門的な知識も必要になりますので、弁護士に相談、ご依頼した方が良いと思います。
④ 差し押さえ
裁判の判決や和解調書、労働審判の調書などは債務名義となり、支払いがなされない場合には会社の資産を差し押さえることができます。ただし、会社の資産の場所や内容は調査しないといけないので、成功するとは限らないのが欠点です。
以上、いずれの段階でも専門的知識をもっている方が交渉において不利にならずに済みますし、それぞれ、費用やメリット・デメリットがありますので、迷ったらまずは弁護士にご相談ください。
〈未払賃金請求のために必要なもの〉
未払賃金を請求するためには、上記のように様々な方法がありますが、会社が支払いを拒否した場合、裁判を利用してでも賃金を請求するためには、「証拠」が必要になります(ただし、交渉であれば証拠がなくてもよいというわけではありません)。双方の言い分が食い違っていた場合、裁判官にこちらの主張が正しいと認めてもらうためには、こちらの主張が正しいと判断できるだけの裏付けが必要だからです。
代表的なものとして、以下のようなものがあります。
- 契約書
- 給与明細
- タイムカード
- 就業規則
- 勤怠表
- 業務日誌
- その他(退職金が未払の場合は、退職金規定。他にも会社から配布されている資料があれば。
これらすべてが必要とは限りませんが、証拠がない場合には、弁護士の対応も難しい場合があります。ただ、上記の代用となる証拠があるかもしれませんので、上記の書類がないからと言って、直ちに諦めず、弁護士にご相談ください。