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【コラム】退職代行と残業代請求

2020-10-24

未払い残業代の請求 

 法定労働時間(原則として1日8時間週40時間)を超えて働いた場合は、時間外労働手当(いわゆる残業代)を請求できます。裁量労働制度が導入されている場合や、管理監督者の場合、など例外はありますが、それらの例外が認められる要件は厳しく、大半の労働者は残業代請求が可能です。

 例えば、

・あらかじめ残業代なしで約束したから払ってもらえない

というわけではないし、

・管理職だから残業代はない

というのも、当てはまらない場合が多く、労基法上の管理監督者に当たらない場合はいわゆる名ばかり管理職となり、残業代請求が可能です。

また、裁量労働制が認められるのは限られた職種であり、しかも法定の手続きが必要です。

したがって、労働者の大半は、時間外労働(残業)をすれば残業代を請求できます。

 残業代請求で最も問題になりがちなのは残業時間の立証ですが、タイムカードや運転日報など明確な証拠があると請求しやすいですが、それ以外にも、パソコンのログイン記録、メールの時間、日記、ICカードの記録、など様々な証拠を用いて立証できる場合もあります。

 

退職代行 

 ところで、サービス残業がある、長時間残業が常態化している、などで会社を辞めたいと思っても、会社の雰囲気として辞めると言いにくい場合が珍しくありません。中にはパワハラ気質の上司が怖くて言い出しにくい、という場合もあるでしょう。しかし、こういう場合、辞めることは労働者の権利です。まず、期限のない雇用の場合(いわゆる正社員など)、2週間前に伝えれば退職できることが民法に定められていますし(就業規則で1か月前と定められている場合の効力については議論があります)、期限の定めがある場合は原則は途中退職できないとされているもののやむを得ない事由があれば途中での退職も可能で、サービス残業などの違法行為が横行している場合は、やむを得ない事由があると言えます。

 

退職代行+残業代請求

 ところで、在職中は残業代請求をしづらいという話をよく聞きます。それによって社内での居心地が悪くなるから、というのですが、本来、労働者として当然の権利であり、在職中に請求することはもちろんかまいません。時効の問題を考えると、在職中であってもすぐに請求したほうが良い場合もあります。ただ、退職する場合は、その後の会社側との関係悪化を心配する必要がないため、残業代請求のタイミングとして良いのも事実です。

 この点、民間の退職代行会社は退職の意思表示を伝えるだけであり残業代請求の代理はできません。なぜなら、退職代行会社は弁護士ではないからです。弁護士でない者が法律業務を行うことは弁護士法という法律で禁止されているのです。それゆえ、退職代行会社は一方的に退職の意思を伝えることはできても、残業代を支払ってほしいという交渉はできないのです。

 その点、弁護士であれば、退職代行と同時に残業代請求をすることができます。

そのためには、時間外労働についての立証方法や証拠の収集(残業をしたことを示す証拠の他、労働条件を示す雇用契約書や労働条件通知書等、給与の支払い状況がわかる給与明細や源泉徴収票などもあることが望ましいです)を弁護士とよく打ち合わせておくことが望ましいと言えます。したがって、残業代請求や退職代行の依頼を考えている場合は、まずは弁護士に相談することが良いと言えます。

当事務所へのご相談

 当事務所でも退職代行や残業代請求の実績がありますので、まずはご相談ください。労働相談は初回1時間は相談料無料です。

 ご依頼の際の費用ですが、退職代行+残業代請求の場合、交渉で解決できれば、3万円と20%(それぞれ税別)が原則です。なお、残業代の回収に訴訟や労働審判を行なった場合は、3万円と25%(それぞれ税別)とさせて頂いております。いずれの場合も、最初は3万円と消費税だけでよく、20%ないし25%はあくまで残業代が支払われた場合に、その額に応じて発生するものであり、当初発生するわけではありません。

 不明点がある場合は、ご相談の際にお尋ね頂ければ、と思います。当事務所は、立川所沢にあるので、ご都合が良い方をお選びいただいて、ご予約の上、ご来訪をお願います。

 

【コラム】残業代の時効についてありがちな誤解と正しい知識

2020-10-12

残業代(時間外労働手当)の時効

 いわゆる残業代(時間外労働手当)については、消滅時効が短いので、注意が必要です。すなわち、一般的な民法上の消滅時効と異なり、時効は、改正前で2年、改正後で3年、となっています。(改正は2020年4月)

 これは、残業代に限らず、賃金については、そのような短期の消滅時効にかかります。労基法115条には「この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、」行使しないと時効により消滅する旨が定められているのですが、143条3項で「「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする」と定められており、結局のところ、当分の間、残業代などの賃金請求権の時効は3年なのです(退職金は5年)。また、上記の通り、改正前に既に発生していたものは2年のままです。

 

退職後2年(3年)以内に請求すればよいという誤解

 残業代請求の時効が2年(改正法では3年)と聞くと、退職後2年(3年)以内に請求すればよいと考える方もおられるようです。しかし、これは、大きな問題があります。なぜなら、時効は、各月の給与支払い日から進行するからです。したがって、退職してから2年(3年)近くが経過してから請求しようとしても、退職直前の支給日の分を除いて時効ということにもなりかねません。

 例えば、残業代未払いが3年程度は続いている企業を2020年9月30日に退職したとします。給料日は毎月25日(月末締翌月払い)だとします。2020年10月1日に残業代請求をすれば、2018年9月25日にもらえるはずだった分はもはや時効ですが(2年を経過しているので)、2018年10月25日にもらえるはずだった分は、この時点ではまだ2年経っていないので時効ではありません。しかし、その分も、2020年10月25日を過ぎると2年が経過しているので時効になってしまいます。こうして、退職2年後の2022年9月30日の時点では、2020年10月25日に支給されるはずだった分を除いて、すべて本来の支給日から2年以上が経過して、時効になってしまっているわけです。*それまでに時効の更新(中断)をしていない限り。 それゆえ、残業代請求は、退職から2年近く待つのではなく、(退職後に請求するのであれば)退職後すぐに行うべきです。

 なお、退職直後に請求してもさかのぼれるのは旧法で2年、改正法でも3年です。何十年も務めていてその間ずっと未払いが続いているようなケースには、大部分が時効になってしまうことになります。そう考えると、本来は、在職中でも最初の未払い分が時効になる前に、速やかに請求することが望ましいのです。ただ、実際のところ、勤めながら請求するのは勤め先との関係を考えて躊躇してしまうケースが多いようです。

 いずれにせよ、各回の給与支払い日から時効は数えるので、請求したいと思ったら速やかに行動することが大事です。

 

今後の法改正の可能性

 現在、残業代など賃金の請求権については、労働基準法115条で5年と定めたうえで143条3項で当分の間3年と定めているという構造になっています。これは、民法の主観的事項が5年とされたこととの関係だと考えられます。すなわち、一般法である民法で5年と定めているのに労働者保護のための法律である労働基準法でそれより短い期間が定められているのは矛盾があります。それを解消するために、いずれ、5年とされる可能性が高いと考えられます。

 

残業代の時効を更新(中断)するには?

 残業代請求権の時効を止める(改正法では更新、改正前の法律でいう中断)するには、訴訟の提起などの方法があります。また、内容証明郵便などによる催告でも時効の完成が6ヶ月伸びます。したがって、まずは弁護士から内容証明郵便を送り、6ヶ月以内に提訴する、という方法もよくとられます。

 

残業代支払い請求は弁護士へ

 残業代などの賃金未払いの問題については、ぜひ、弁護士にご相談ください。残業代請求は、単価計算、割増率、など、複雑な問題があります。よほどしっかりした知識がある方ならともかく、多くの場合、自分で請求書や訴状を作ることは難しいと思います。法律の専門家である弁護士に相談して、しっかりとした内容の請求を行いましょう。

 

【コラム】労働者であるかどうかの判断

2020-10-07

労働者であるかどうかが重要な理由

残業代(時間外労働手当)、解雇規制、など各種労働者保護規定は、労働者だからこそ適用されるもの。もし、労働者ではなく請負や準委任なら少なくとも直接的に適用されることはありません。また、労災も労働者を保護するための法律であるため、労働者ではないとされると負傷しても労災保険で救済してもらうことができなくなってしまいます。しかし、形式としては請負や準委任でも、実質的には雇用の実態があるのではないか、と思われる場合もあります。そこで、残業代の請求や労働災害保険の支払いが問題になったときに、形式的には雇用以外の形態でも実質は労働者であるとして労働法に基づく権利が主張されることがあります。その場合、どのようにして判断すればよいのでしょうか?

 また、労働組合の組合員になる権利があるかどうか、ということで争点になる場合があります。このような労働者としての集団に含まれるかどうかという問題を集団的労働関係の問題と言います。これに対して、時間外労働手当の規定や解雇規制などが適用されるかどうかという問題を個別的労働関係の問題と言います。ここでは、そのうち、個別的労働関係の問題について扱います。

 個別的労働関係においてもっとも重要なのは、労働基準法9条の労働者に当てはまるか、です。すなわち、労働基準法9条はこの法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」としています。ここでいう労働者に当てはまるとされれば、労働基準法における各種の保護(時間外労働手当、残業時間規制、など)が適用されるからです。労働契約法や労働災害補償保険法における労働者と範囲が同じかどうか、についても学説の争いはありますが、実務的は同一という前提で動いていると思います)

旧労働省の報告書

旧労働省では1985年に労働基準法の労働者の判断基準についての研究会を開催し報告を行なっていて、その内容は、労働省労働基準局編『労働基準法の問題点と対策の方向-労働基準法研究会報告書-』 日本労働協会(1986)に記載されています。この報告は、行政機関の報告ですので、直接的に裁判所を拘束するわけではありません。しかし、労働行政を担当する官庁である労働省(当時)の研究会が出した報告書であり、実務において大きな影響力を持っていると考えられています。

 上記の報告は、指揮監督下の労働報酬の労務に対する対償性の2個を使用従属性の判断基準として示し、労働基準法第9条の労働者に当たるかどうかを判断するための基本的な基準であるとしています。

 これによると、指揮監督下であるかの判断要素としては、イ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無 ロ 業務遂行上の指揮監督の有無 ハ 拘束性の有無 ニ 代替性の有無 が挙げられ(ただし、代替性の有無は指揮監督関係の判断を補強する要素)、報酬の労務対償性に関しては、成果による差が少ない場合や欠勤控除や残業手当が存在する場合等には使用従属性を補強する、とされています。

 また、上記で判断が難しい場合には、事業者性の有無(機械、器具の負担関係、報酬の額、損害に対する責任、独自商号の使用)、専属性の程度(他社の業務を行うことについての事実上の制約、報酬が固定されているか、報酬が生活保障的なものか、など)、なども補助的に判断事由にしうるとされています。それ以外に、選考過程、源泉徴収の有無、労働保険の適用の有無、服務規律の適用の有無、退職金・福利厚生の適用の有無、などを使用者の認識を示しているとして考慮した例があると指摘しています。

判例では?

 労働者であるかどうかが争われた事例は多数あり、最高裁判例も複数あります。それらの判例では、労災の支給対象になるか、残業代が支払われるべきか、という点などが問題なっています。

平成8年11月28日最高裁判決(横浜南労基署長事件)は、労災保険の不支給決定取消しを巡る訴訟であり、トラックを所有して運送を行なっていた者が労働者であるかどうかが問題となった事案ですが、労働者であるとは認められませんでした。この判例では、当該運転手が自己の計算と危険で業務に従事していたことや、場所的、時間的拘束が従業員と比べて緩やかであったことなどが重視されていると考えられます。

最判平成19年6月28日(藤沢労基署長事件)は、大工である一審原告が労災保険の不支給決定の取り消しを求めて提訴した事案であり、判決文からは、指揮監督の下での労務の提供、および労務の提供の対価としての報酬の支払いの有無、が基準として用いられていることが読み取れます。裁判所での審理の結果、指揮監督の下での労務の提供、報酬の労務対償性いずれも満たさないと判断され、労働者ではないとされました。

最判平成17年6月3日(関西医科大学研修医(未払賃金)事件)は研修医の労働者性が問題となった事案で、勤務時間と場所の指定や源泉徴収などの事実を認定し、労働者であったとされています。この事件は、死亡した研修医の遺族が提訴したものです。

高裁判例だと、東京高判平成14年7月11日(新宿基署長事件)があり、これは映画技師について労働者性を肯定しています。

また、東京地判平成22年4月28日(ソクハイ事件)はバイク便のメッセンジャーとして稼動してきた原告が従業員としての地位の確認や未払い賃金支払い等を求めたものです。この事例は、所長については労働者、メッセンジャーについては労働者ではない、としています。

その他、多数の高裁・地裁判例があり、例えば、NHKの集金人やバイクによる配達人についての労働者性が争われています。

これらをみても、やはり、基本は1985年の労働省の報告書が示して基準に沿った判断がされているようです。

*以上2節は、私自身の修士論文『日米の職務著作制度の適用に関する比較研究-個別的労働関係との違いを中心とした分析』35‐40頁を元に加筆・修正

重要な点は

 重要なのは、労働者であるかどうかは、契約の名目のみで判断されるわけではなく、指揮監督下の労働であるかどうか、報酬の労務に対する対償性(報酬が労務の対価と言えるかどうか)で判断されているということです。したがって、建前は請負や準委任でも労働者としての権利を主張できることもあります。

 ただし、実務的な感覚では、請負や準委任という形式で契約されている場合に労働者性を主張できるケースは多くはありません。時間的な制約があるというだけで労働者であるということも困難です。たしかにトラックを用いて運送を行なっていれば荷物の積み下ろしの時間や場所は制約されますし、大工だといつどの現場に行って作業をしないといけないかという程度の制約は生じますが、それだけで仕事についての拘束があるから労働者ということには必ずしもなりません。認められるためには、時間的・場所的拘束の強弱の他、道具の提供はどちらが行っているか、仕事や業務指示を断れるかどうか、他の仕事も自由にして良いか、報酬の計算方法、服務規律の適用の有無、など、様々な要素を元に、指揮監督下の労働であり報酬は労務の対価であるといえることが必要です。もっとも、上記の通り、労働者性を認めた事例もあるので、微妙な場合には、まずは弁護士に相談してみると良いでしょう。

 

 

【コラム】残業代・・労働審判か訴訟か

2020-10-02

残業代請求の流れ

 残業代未払いについてご依頼頂いた場合、弁護士は、まず、残業代を計算した後、内容証明郵便で支払いを求めます。しかし、企業側が支払いに応じない場合もあります。その場合は、労働審判か訴訟を行うことになります。

 

労働審判と訴訟の違い

 労働審判も訴訟も地方裁判所で行われることに違いはありません(ただ、訴訟は請求元本が140万円以下の場合は、簡易裁判所の管轄となります)。しかし、訴訟は、時間をかけてでも審理をして請求内容が正しいかどうかを裁判所が判断して請求認容が認めるかどうかを明らかにすることを目的とするのに対し、労働審判は、早期の解決を目指す点が異なります。

 すなわち、訴訟は原告による訴状の提出によってはじまり、被告がその請求について認否をし、請求原因に反論する準備書面を出して、それに原告が再度反論して、という形で進んでいき、期日には基本は片方だけが書面を出すため、交互に主張をしていく形となります。ただ、回が進んでいくと、双方が同時に出すこともありますが、基本は交互です。そして、期日の回数に制限はありません。

 一方、労働審判は、3回以内に終わることとされており、初回から充実した審理が行われます。そして、双方の主張が出そろったところで、合意による解決が目指されます。そういう意味では、調停的な要素も持つ手続きだと言えます。しかし、3回以内に合意に至らないと、審判が出されます。なお、審判は2週間以内に異議を出さないと確定しますが、期限内に異議が出れば、通常訴訟に移行します。

 

どちらの手続きを申し立てると良いか

 残業代請求をしたい場合、訴訟と労働審判、いずれを申し立てることが望ましいでしょうか? これは、事案によります。労働審判のほうが合意を目指した手続きという面があり、期日も原則3回以内とされているため、早期に終わる傾向はありますが、訴訟でも和解がされることはあり、長引くとは限りません。しかし、訴訟だと第1回は「追って答弁」という答弁書が提出され実質的な審理がなされないことも多いし、一般的にはそれなりに時間がかかるように思います。そこで、合意の可能性があり、早期解決を希望する場合は、労働審判を申し立てた方が良いのではないか、と思います。

 もちろん、訴訟でも労働審判でも弁護士が代理人となることができます。当事務所では労働問題の相談は1時間まで無料なので、残業代未払いで困っている方は、まずはご相談ください。

【コラム】整理解雇の4要件

2020-08-09

整理解雇、つまり、会社の経営不振などで従業員が余剰になったために解雇する場合、一定の要件を満たさないと認められないことが最高裁により明らかにされています。これが整理解雇の4要件として知られているものです。

 簡潔にまとめると、

1、人員削減の必要性があったか

2、解雇を回避するための努力を尽くしたか

3、解雇対象となる人の選択に合理性があるか

4、事前協議を充分に行なったか

ということなのですが、これらすべてを満たしているか4つの要件を個別に審査すべきという説と、総合的考慮で良いという説があり、下級審では統一されていません。いずれにせよ、基本的に上記4要件の充足の有無が問題になるのであり、決して経営側の自由裁量ではありません。

 近年で言えば、例えば、コロナ感染症の流行で売り上げが落ちて人員削減の必要性が生じたとしても、希望退職者の募集など解雇以外の方法で解決する努力がなされていないと解雇が無効になる可能性が高いし、経営側が普段から気に入らない従業員を意図的に狙い撃ちにして解雇したような場合にはやはり無効となる可能性があります。さらに、解雇対象となる労働者や労組がある場合には労組との協議が尽くされていないと無効とされる可能性が高いでしょう。なお、これらは、整理解雇の場合の基準であり、懲戒解雇の場合には別の判断要素が用いられることに注意が必要です。

 訴訟等により解雇が無効と認められた場合には、従業員としての地位が認められ、かつ、その間の給与も支払われるというのが原則です。解雇の有効性を争いたい場合は、まずは弁護士にご相談ください。当事務所でも労働側から労働問題についての相談を受けたり依頼を受けた経験がございます。まずは、お電話か電子メールでご予約の上、立川か、所沢の当事務所までご来訪ください。当事務所では、労働問題の相談は1時間まで無料です。

【コラム】残業代請求に必要な証拠

2020-08-07

残業代請求に必要な証拠として、誰でも思いつくのがタイムカードです。タイムカードがあれば、残業した事実や時間がわかります。それ以外にも運転手の場合の運転日報なども労働時間を立証するための証拠となります。それらがない場合には、パソコンのログイン記録、社内メールのやり取りの時間、などにより立証できる場合もあります。

以上は、労働時間を立証するための証拠ですが、それ以外にも、残業代請求の基礎となる給与を立証するために、雇用契約書や就業規則など基本給の額がわかるか計算する根拠が書いてある資料があることが望ましいです。これについては、給与明細からもわかることが多いでしょう。

その他、労働時間に付いて特別な定め(変形労働時間など)がされている場合は、それについてわかる資料(労使協定や就業規則の写し)もあると良いでしょう。

このように、残業代請求においては、様々な証拠が役立ちますが、一般的に必要といわれている証拠そのものがなくても、何か別の方法で立証できる場合もありますので、まずはご相談ください。

 

 

 

 

【コラム】退職代行・・有期雇用と無期雇用の違い

2020-06-22

退職したいと思ったとき、有期雇用と無期雇用では、法律上の容易さに違いがあります。

無期雇用の退職

すなわち、正社員などの無期雇用の場合には、民法上(627条1項)、2週間前に退職の意思を伝えることで、退職できます。就業規則で1か月まで延長しているケースもあり、その有効性には争いがありますが、労働者の自由の観点から就業規則による延長の効力を否定し民法の定める2週間前で良いとする見解が有力です。

有期雇用の退職

これに対して、有期雇用の場合には、原則として、期間が終了するまで一方的な退職はできないこととされています。ただ、やむを得ない事由がある場合には期間の途中でも退職ができると定められています(民法628条前段)。この「やむを得ない事由」には、体調不良、介護、などにより労務提供が難しくなった場合等の他、労働条件が事前に説明されていた場合と異なる、サービス残業をさせられるなど労働法規への違反がある、パワハラやセクハラなどの被害に遭っていて対策をしてもらえない、など会社側の問題も含まれると考えられています。なお、やむを得ない事由が本人の過失により生じた場合は損害賠償を求められる可能性がある(民法628条後段)ので要注意です。また、期間雇用でも期間が1年を超えた場合は例外を除き自由に退職できます(労基法137条)。

実務的な問題

 このように、法律上は、正社員などの無期雇用の方が退職しやすく、有期雇用の退職には制限があります。しかし、実際のところ、やむを得ない事由が存在することも多く、また、仮にやむを得ない事由が否定されたとしても、会社が退職者に損害賠償請求をするためには損害を立証しなくてはいけません。そうすると、業務を他の従業員が代替することが可能であるなど社内における役割がそれほど重要ではなく募集も簡単なパートやバイトの場合に実際に損害賠償請求が認められるケースは多くはないと考えられます。契約社員などで他の従業員では代わりができないなど急に退職すると会社の業務に支障が生じる可能性が高い場合には、やむを得ない事由がないのに途中でやめると損害賠償請求が認められてしまう恐れもあるので、やむを得ない事由があるといえるかどうか弁護士によく相談すると良いでしょう。

弁護士に相談するメリット

 ご自身で退職に関する問題をお勤め先と話すのはどうしても気が重いと思います。また、引き止められてしまい、なかなか退職できないという話も聞きます。しかし、退職、転職は職業選択の自由の具体化であり、労働者の権利です。有期雇用の場合は制限もありますが、それについても多くの場合、やむを得ない事由が認められますし、実際のところ、争ってこないケースも多いです。

 弁護士にご依頼頂ければ、弁護士がご依頼者様の代わりに、お勤め先に連絡し、退職の意思を伝え、法的争点があるときは当方の立場を主張します。これにより、ご依頼者様はもはや直接会社側とお話しする必要はなくなります。

 退職したいけど言い出せない、引き止められて困っている、という場合は、ぜひ、弁護士にご相談ください。

 

【コラム】退職時の残業代請求について

2020-06-07

残業代(時間外労働手当て)は、退職時でなくても請求できます。ただ、在職しながら請求すると社内での居心地が悪くなると考える方が多く、実際に残業代請求を弁護士に依頼するのはたいていは退職時だと思います。では、退職時に残業代請求をする際、どのような点に気を付ければよいでしょうか?

残業代が発生するのは?

まず、残業代の請求は、当然ながら、残業(時間外労働)をした場合です。一般に残業という言葉が使われますが、いわゆる早出残業の場合も会社の指示に基づいて行われたのであれば対象になります。

 残業は正式には時間外労働と言い、法定労働時間を超えた場合に発生します(ただし、法定労働時間を下回る労働時間が契約等で定められている場合は、それを超えた部分について発生します)。法定労働時間は原則は1日8時間、週40時間ですが、変形労働時間をとっている場合など例外があるので、まずご自身がどのような就業規則や雇用契約等の下で働いているのかを確認する必要があります。

 

どのような証拠が有効か?

 残業代を請求するためには、残業をした証拠がなくてはなりませんん。また、いつ、どれだけ残業したのか、わかることが必要です。一般にはタイムカードのコピー、運転手なら運転日報のコピー、などは客観性が高い証拠ですが、それ以外に、退勤時刻についてのメモや退勤時に家族に送っていたメールなどが証拠となる場合もあります。また、パソコンのログイン記録ビルの出入りの記録なども証拠になりえます。

 また、上記は残業に関する証拠ですが、雇用されていたことの証拠としては雇用契約書があることが望ましいし、労働条件に関して就業規則の写しでわかることが多いです、ただし、小規模な職場だと就業規則がない場合もあり、その場合は雇用契約書で立証することになります。また、就業規則より有利な労働条件が個別契約書で定められている場合はそれに従うので、いずれにせよ雇用契約書があることが望ましいです。

 また、給与明細は、残業代が払われていないことを示すための資料となります。

残業代の割増

 残業代については、(法定内の場合を除いて)最低でも25%の割増が必要です。(深夜残業だと50%。また、月60時間を超える場合にも50%割り増し)

残業代の計算は、基礎となる賃金の計算も含めて、複雑なので、専門家である弁護士に依頼したほうが良いと思います。

時効に注意

 残業代など、賃金は、本来の支払い日から2年で時効になります(令和2年4月以降に支払期限が来る場合は、3年)。

つまり、例えば、平成30年(2018年)7月10日に支払われるべきであった残業代は、令和2年(2020年)7月10日に時効になってしまいます。時効になる前に請求すれば、時効を止めることができます。ただし、内容証明郵便などによる方法だと6か月間時効の完成が伸びるにすぎず、訴訟など法的な方法で請求をすることで時効の中断(改正民法で言う「更新」)をすることができます。

 

まずはご相談を

 残業代請求は、労働者の権利です。しかし、権利行使のためには、上記のように複雑な計算が必要で、かつ、時効期間も比較的短いのです。そこで、残業代未払いで困っている場合は、弁護士へのご相談をお勧めします。当事務所でも、残業代請求の案件を扱った実績があります。まずは、ご相談ください。

【コラム】労働者側から見た労働審判のメリットとデメリット

2020-05-29

労働審判とは

労働審判は労働審判法に基づいて導入された比較的新しい手続きで、通常の裁判とは異なる手続きで労働紛争の解決を目指すものです。調停と審判の複合的な性格を持つ手続きであり、合意に至らなかった場合には、審判が出されます。審判は確定すれば執行が可能であり、そういう意味で強制力があります。しかし、告知から2週間という期間内に異議申し立てがあれば、確定はせずに、通常の訴訟に移行します。

労働側にとってのメリットとデメリット

残業代の請求や不当解雇を争う労働者にとって、この手続きのメリットとしては、通常3回以内で終了するため早期解決が期待されること、調停的要素があり労働審判委員会により合意形成へ向けた説得が行なわれるため審判まで至らずに合意により解決できる場合も多いこと、合意ができた場合の調書や確定した審判は債務名義として強制力を持つこと、などが挙げられます。

 一方、欠点としては、複雑な問題を含む場合には労働審判で取り扱ってもらえない場合もありうること、審判に対して2週間以内に異議を出された場合には通常の訴訟に移行するため必ずしも早期解決が保証されているわけではないこと、などが挙げられます。

 

時間的な制約について

主張や証拠の提出に関する期間的な制約が厳しい

 また、上記の通り、労働審判は早期の解決を目指しており、回数の制限があります。それゆえに、主張や証拠は充分に準備をして申し立てる必要があります。民事調停のように回数の制限がない手続きではないので、不十分な主張や証拠だと手続きの円滑な進行の妨げとなりかねません。しかも、合意ができなければ審判が出される扱いであり、主張や証拠の提出は原則として1回目の期日に、遅くても2回目には出すことになっているため、準備が不十分だとそれゆえに不利な審判が出る恐れもあります。

 

弁護士にご相談を

上記のように主張や証拠の提出期限に対する制約が厳しく、あらかじめ充分な主張の組み立てや証拠の収集が必要です。これは、一般の方の力だけでは難しく、専門家の力が必要だと思います。したがって、労働審判による解決を目指す場合は、弁護士に相談、依頼して充分な準備をすることが望ましいといえます。

当事務所でも、労働側で労働審判の申立てを行い解決に導いた経験があります。労働審判による解決を考えておられる方は、まずは、ご相談ください。

 

【コラム】残業時間の上限について

2020-05-20

労働基準法では1日の労働時間を8時間、週40時間と定めてます(例外はあります)。まず、36協定がない状態では、残業をさせることはできません。そこで、残業を適法にするためには、労働基準法36条に定められた労使協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。この協定を36協定といいます。

 従来は、この36協定で延長できる労働時間について、厳密な意味での上限がなかったので(大臣告示による基準はありましたが、法的拘束力がありませんでした)、かなり長い残業を認める36協定を結んでいる企業もありました。ところが、現在は、法律で36協定についても上限があり、普通協定、特別協定、ぞれぞれ延長できる時間数に制限があります。また、特別協定の適用にはあらかじめ36協定において定められた事由に該当することが必要です。

 この法律の上限は企業と労組等が同意する際の上限であり、これを超えた協定は違法ですが、これを下回る定めをすることはもちろんできます。法律上、普通協定の上限は、通常、月45時間、年間360時間ですが(1年単位の変形労働時間の場合の例外に注意)、例えば、月の残業の上限を20時間、年間では200時間まで、という協定も可能です。そして、残業が可能なのは、その具体的な協定の範囲内です。それゆえ、もし、労働者の立場で、「残業が長い」ことに不満がある場合は、36協定を確認してみると良いでしょう。逆に、経営側の立場で、仕事が忙しいからしばらくは残業を増やしたい、と思った場合は、必ず、有効な36協定の時間外労働に関する規定を確認する必要があります。上限を超える残業(時間外労働)をさせると違法になってしまいますので、充分な注意が必要です。また、特別協定を適用するときには、適用の条件を満たしているかも確認しなくてはなりません。

 なお、上記は原則的な仕組みの解説です。実際は変形労働時間、裁量労働制、管理監督者、など様々な例外的制度があります。そして、それらは適用のためには条件があり、決して企業側の都合で恣意的に適用できるわけではありません。例えば、裁量労働制は適用できる職種が限定されています。また、管理職=管理監督者とは限らず、社内的には管理職であっても実態は通常の労働者である場合には管理監督者としては扱われず、残業時間の上限が適用され、時間外労働手当て(残業代)の支払いも必要です。

*以上の記述は、残業時間の問題について、わかりやすいように概要を述べたものです。個別の案件においては当てはまらない部分もありますので、ご注意ください。

 労務管理については、様々な複雑な規定があり、法律に詳しくない方が自分で理解するのは大変です。それゆえ、労働側、経営側、問わず、労働に関して悩みがある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。特に、経営側の場合、具体的にトラブルに巻き込まれていなくても、問題が起きるのを防ぐために法律事務所と顧問契約を結んで繰り返し相談をするということも意味があると思います。

 当事務所は、労働側で残業代請求や不当解雇問題を扱ったこともあり、一方、企業から労働問題についての相談を受けることもあります。

労働側、企業側、問わず、労働問題で悩んでおられる方は、まずはご相談ください。

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